志賀草津道路を後にして、次なるは毛無峠へ・・・
「峠」という字は、「山」偏に「上下」と書いて「峠」となる。 文字通り、上りきりそこから下りになる場所である。
でも、「行き止まりの峠」というものが、長野県と群馬県の県境に存在する。それが毛無峠なのです。
毛無峠
自転車人 2010夏号」の「特集 信州アルプスルートをめぐる旅」の中で、初めて毛無峠の存在を知り、いつか行きたいと思っていた峠。その毛無峠に、四年越しでようやく行くことができました!(^^)v
毛無峠-001
渋峠を後にして、標高1800m前後の高さでアップダウンを繰り返しながら上信スカイライン走ります。
途中では、さっきまでいた渋峠や横手山が遠くに望めます。 やや雲が多くなってきましたねー

「行き止まりの峠」であるがゆえに、長野県側からの一方しかアプローチが出来ない。
万座三叉路から約10km程走ると、毛無峠へと続く分岐があります。
4月に来た時は、まだまだ残雪が多くて冬季通行止めでしたね。
あの時の写真を見ると、看板の高さからすると約1.5mの残雪があったんだね。
また、広い道路に見えるけれど、実際の幅員は1.5車線といった感じですね。

毛無峠-002
毛無峠へのアプローチはハイマツ広がる山すそを走る道路で、少し下ってまた少し上り返すといった勾配。
峠に近くなってくると徐々に舗装が悪くなり、最後にはダートになる。
途中に写真のような湧き水ポイントがあって、顔を洗ったりサイクルキャップを濡らして涼をとったりと。。。

毛無峠-003
林の中を縫うように進んでいた道が、峠に近づくと、樹木は一切なくなる。
硫黄を含んだこの周辺の土壌が、また、強風が吹き抜ける地形から、このような植生を作り出しているのだろうか?

毛無峠-004
峠に近くなってくると、左手の山に5本の古い鉄塔が目に入ってきた。
後述するが、廃坑となった小串硫黄鉱山と高山村を結んでいた索道跡である。
狭い間隔で設置された支柱、廃されてから40年以上も経ってるので、錆びて褐色化していて、周囲の雰囲気も相まって異様な光景ですね。

毛無峠-005
そして、行き止まりの毛無峠に到着! 
この地にいるのは自分だけで景色を独り占め! 浅間山が綺麗に見えてますねー
長野県と群馬県の県境となっているが、群馬県側は危険であるため立入禁止となっている。
これが「行き止まりの峠」と呼ばれる所以だ。

「グンマー」ネタで、この峠の看板をプリントしたTシャツもあったり。 コラではなく実在する。
そしてこの「群馬県」の看板、この地に相応しくなく、めちゃくちゃデカい! バイクと同程度の大きさがある。
また、バイクに隠れているけれど「遭難多発区域」の看板というのも初めて見ました。
この先も、群馬県側の小串硫黄鉱山跡まへの道は続いており、九十九折りのこの道は「ジロー坂」という名前らしいです。

尾根の上にある誰もいない毛無峠。標高1823mの峠は、あまりにも静かです。
聞こえてくるのは、時々思い出したように吹く風の「ヒュー、ヒュー」という淋しげな音。
かつて、一攫千金を夢見て、猛者たちが行き交ったとは思えないほど悲しい光景です。

下北の恐山や、秋田の川原毛地獄のような霊地、或いは賽の河原のような感じもする地、
何とも鬼気せまるものがあり、哀愁的、神秘的な所でとても印象的な峠ですね。

毛無峠-006
毛無峠の地名は、周辺に木々がないところから付いた名であるという。
峠にあった小さい手書きの看板、左に記載がある「アチャー・ダンベの国境」って何かな?と後で調べてみたら、「アチャ」は長野県の方言で「あのね」と相手に問いかける時に使う言葉で、一方「ダンベ」は、群馬県など北関東で語尾に使われる「何々だべ~」を意味するらしい。
背景に写る山は破風岳(はふだけ)1999mで、標高から20世紀最後の年に、メモリアル登山で賑わったことがある所です。

毛無峠-007
毛無峠は尾根になっていて、群馬県側の眼下には、広大な産業遺構である「小串硫黄鉱山跡」が見え、雄大な景色の中、赤茶けた土を晒しています。
硫黄鉱山としては国内生産第2位を誇り、国の産業を支えた重要な鉱山の一つだったのです。
群馬県嬬恋村の山中に位置し、昭和4年に創業し、昭和46年の閉山まで硫黄を生産し続けた鉱山です。
最盛期は2000人以上が住み、学校はもちろん店舗などもあり、一つの「街」を形成してたとか。

前述した鉄塔は、硫黄を長野県側に運ぶための索道跡で、10km以上も続いていたそうです。
毛無峠に残る象徴的な遺構ですね。
群馬県側にありながら、硫黄や生活物資を運搬するための交通は、むしろ長野県側と結びつきが強かったようです。

特にこの鉱山で語られるのは昭和12年にあった山津波。
この大規模な地すべりは多くの犠牲者が出て、行方不明者は今もまだこの地に眠っています。
そして定期的にこの災害で犠牲になった人たちを追悼する慰霊祭が現在も行われているそうです。

毛無峠-009
今回、毛無峠に行くに際していろいろと調べていたら、峠の地下300mの深さに、長さ1332mの 「毛無隧道」と呼ばれるトンネルがあることを知りました。
トンネル内にはレールが敷かれ、トロッコが通り、その脇を人が通行していたとか。
古い地形図を見ると、確かにトンネルの存在がありますね。
坑口は閉塞されているけど今でも現存しているとか・・・

毛無峠-008
長野県側にも、索道跡の支柱が、ポツンと1本あります。
そして、なだらかな斜面が続いて、高度感がありますね。
期待していた、飯綱山、戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山の北信五山は雲隠れ・・・ ザンネン!

毛無峠-010
常に強い風が吹いている所と聞いていましたが、時折のブロー程度でとても静かな様相の毛無峠でした。
また、気流の影響で雲や霧が発生しやすい所のようですが、この日は、時々雲がかかるものの、360度の眺望が見られてラッキーでしたね。

毛無峠-011
毛無峠を後にして、長野盆地を左手に見ながら来た道を戻る途中、軽ワンボックスの方に声を掛けられた。
どうやらバッテリーが上がったので、押しかけする下り道まで押して欲しいとのこと・・・ やれやれ。。。
一仕事を終えて、いろいろとお話をさせてもらったところ、ホシガラスという鳥の写真を撮りに来られたとか。
写真の右手前に写っている岩の所に、よく飛来して止まっているそうです。
しかし、このまま誰も通らなかったら、どうしたんだろうね?

毛無峠-012
高山村へ下っていく県道112号大前須坂線が、拡幅工事により通行止めで迂回することに。
オイオイ!聞いてないよ~ 
事前リサーチでは、道路を管理している長野県の須坂建設事務所のサイトでは、ここの路線はアナウンスされていなかったぞ! 帰ってきてから調べたら、高山村のHPの村内道路情報にお知らせがありました。

拡幅工事なので、このまま行っても自転車ならば通れそうな気もするが、規制誘導どおりに迂回します。
この迂回路がとんでもない荒れ道で、延々8kmも続く下りの悪路なのだ。。。
林道中日影線という林道、でも地形図を見ると破線表示になっている「徒歩道」じゃないかぁー

毛無峠-013
走り始めると、とんでもなく走りにくい! ちなみに、写真の場所はとても程度がいい所です。
轍が無く、締め固まった地肌に砂利が浮いていて、下り勾配でタイヤは滑る、ブレーキは流れるなどと・・・
空気圧を少し落として何とか走り出すものの、所々で突出した石があったり、鋭利な石がゴロゴロ転がっていたりと、CXでも厳しい悪路です。

路面を選びながら恐々と走っていたところ、前輪が「プシュー」と一発でぺしゃんこ! リム打ちです・・・ トホホ
チューブを替えて走り出してしばらくすると、今度は後輪がスローパンク・・・ 再びトホホ
替えチューブが無いので、パッチを貼ろうと穴を探すものの見つからない。
ボトルのドリンクをかけても分からないよ~?

チューブを戻して、だましだまし空気を入れながら下るものの、直ぐに抜けてしまう破目に。
しょうがないので、リム打ちパンクした先ほどの前輪のチューブを直して使うことに。
これがまたスネークバイトの穴なので、持ち合わせのパッチサイズだと塞ぐのが難しいぞー
何とか直して、後輪チューブを交換して走り出したところ、舗装路まで後2kmという所で3回目のパンク・・・
トホホを通り過ぎて意気消沈。(激泣) 手持ち最後のパッチを貼って何とかリカバリー・・・ 

まだ陽がある時間帯で、雨が降っていなかったのがせめてもの救いでした。  いゃー参りました。 
今度から遠出のツーリング時は、チューブとCO2ボンベは2本持ちですね。 いや、3本かな? w

毛無峠-014
好天で気を良くしていたら、最後の最後にきてパンク祭り! 徒然草第109段 「高名の木登り」 ですね。。
体力的よりも、パンクにより精神的に疲労困憊!
翌日も天気が持ちこたえそうだったら、長野泊するつもりで来たけど、替えチューブもパッチも底をついたので帰ることとします。
最後は、須坂温泉で癒して、長野駅からE7系の車中の人となりました。

毛無峠は渋峠とは違い観光的な所ではなく、訪れる人も少ない。
しかし、他の峠には無い雰囲気が、この峠にはあります。
荒廃した風景の中に、ポツンとたたずむ索道跡が青空に映える。 何とも言えない不思議な時空間でした。
周りの景色はいいが、風が吹き抜ける音しか聞こえず、どことなく寂しい気持ち、何か怖さも感じることも。
雄大な景色を独り占め!秘密のスポット!間違いなく記憶に残る峠の一つになるでしよう。。。。

最後はパンクというオチが付きましたが、天気にも恵まれて絶景が望めて最高のライドでした!
夏の青空の下での涼風ライド、かねてから行きたかった峠、何とか溜飲が下がったかな?
夏も、もう終わりそうです。 そして、秋へと移り変わりますね・・・